第1章
第一話 「乾燥パスタに負ける」という謎
新居の床材を決める段階で、私は杉を有力候補として検討していた。天然素材の温かみ、調湿性能の良さ。ネットで調べた情報も悪くない。価格帯も手頃だ。
しかし契約直前、とあるSNS投稿に目が止まった。「杉床は乾燥パスタに負けます」。
意味がわからない。乾燥パスタとは何の関係があるのか。最初は冗談だと思った。だが、スレッドを辿ると、意外と真面目な議論が展開されていた。どうやら杉の「柔らかさ」についての話らしい。
投稿者の説明によると、杉は硬度が低く、掃除機の車輪や椅子の脚でも傷つきやすい。さらに、乾燥パスタを床に落とすと割れずに跳ねるが、杉床なら凹んでしまうというのだ。それほど柔らかいということか。
私は正直、首をかしげた。天然素材は傷つくものじゃないのか。そもそも、なぜ比較対象が乾燥パスタなのか。
コメント欄では、杉床を後悔している人たちの声が次々と上がっていた。「5年で見る影もなくなった」「手入れの手間がすごい」。一方で、「それでも好き」という擁護派も。
これは単なる床材選びの話ではない。何かもっと大きな、選択の本質についての問題が隠れている気がした。私は深呼吸して、もう一度調べ直すことにした。
続きはまもなく
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