第1章
第一話 消える声
山奥の集落で録音した祖母の話を、パソコンに向かって文字起こししていた。方言特有の音韻、文法。もう街ではほぼ聞くことのない表現ばかりだ。
「これ、どうしよう」
膨大なテクストデータ。整理して、分析して、地図に落とす。従来なら数ヶ月かかる作業だ。でも最近、研究仲間から聞いた話が頭から離れない。テクストを貼るだけで言語分布が自動で可視化されるツールがあるって。
ほんとかな。そんなことできるのか。
ノートパソコンのキーボードを前に、手が止まる。こういうテクノロジーって、研究を本当に加速させるのか、それとも何か大事なものを失わせるのか。フィールドワークで出会った人たちの声を、ツールに頼って処理するって、なんか違う気がする。
でも、このままでは間に合わないのも事実だ。消えゆく言葉は毎日少しずつ失われている。時間との勝負なんだ。
画面を見つめながら、彼女は新しいツールを試してみることにした。
続きはまもなく
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