分類の境界線

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第一話 定義の彼方へ

朝、デスクに届いたメールを読み返していた。環境省の資料撤回の報は、思った以上に業界内で波紋を広げていた。

由美は環境保全の団体で働いている。野生動物の保護を掲げるこの仕事は、ときに二律背反する価値観の綱引きだった。

「つまりさ」と隣の席の同僚・田中が身を乗り出す。「野良猫も野良犬も、全部除外しろってことでしょ?」

「そういうことみたいだね」

「でもそれって…」田中が眉をひそめる。「野生動物と家畜の区別って、どこにあるんだ?」

その質問が、由美の中に小さな引っかかりを生じさせた。確かに。人間が勝手に引いた線なのではないか。昨日まで「有害」と呼んでいた存在を、今日から「保護対象外」と言う。そういう決定が、果たして正しいのか。

そもそも、野生化した動物たちは何が悪いのか。人間の都合で分類され、評価され、時には排除される。それが自然なのか。

由美は資料を見つめた。公式な定義を求める声。その声を無視する判断。どちらが「正解」なのか、その問いは今、由美の中で音もなく響いていた。

続きはまもなく

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