金利の迷宮

1/1

1

第一話 会議室の空気

日本経済新聞の経済部に配属されて三年目。佐藤は編集会議で妙な違和感を感じていた。

「金利を上げる決定は技術的には妥当だけど…」上司の言葉が途切れた。モニターには、大臣と日銀総裁の会談を伝えるニュース画面が映っている。

最近、取材先の政策当事者たちの話し方が変わった。従来なら、インフレ対策や金融政策の中立性といった経済学的な説明が主流だった。だが最近は、どこかよそよそしく、あたかも別の誰かに説明しているような言い回しが増えた。

夜、資料を整理していて、佐藤は一本の記事に目が留まった。為替相場の動き、国債利回り、そして—米国の声明。点と点が繋がるような、繋がらないような。

なぜ、金融政策の話が外交カードになるのか。経済学の教科書では習わない。だが市場はそれを読んでいるようだった。

佐藤は手帳を開き、関係者へのインタビュー予定を書き込んだ。この迷宮の入口は、おそらくここではない。

続きはまもなく

目次

コメント