第1章
第一話 温もりと棘
日曜午後、私は保護猫カフェの扉をくぐった。SNSで見かけた穏やかな空間に惹かれて。
カウンターの女性が淹れたコーヒーを片手に、私はソファに腰を下ろした。すぐに何匹かの猫が寄ってきた。その中に、薄汚れた毛並みの黒猫がいた。他の猫たちとは違う、どこか緊張した動きをしていた。
"この子は大丈夫ですか"と聞いた私に、スタッフは笑顔で"大丈夫ですよ"と答えた。
その後は、記憶が飛ぶ。黒猫が私の腕に飛びかかったのか、私が急に動いたのか。痛みだけが明確だった。爪が皮膚を引き裂く音、温かい液体が流れる感覚。
スタッフが駆け寄ってきた時、彼女の表情は変わっていた。謝罪ではなく、何か別の感情が浮かんでいるようだった。
"実は...この子、虐待を受けていた過去があって。以前もお客さんに..."と、言葉が続いた。
私は絆創膏を貼ってもらいながら、その言葉を反芻していた。過去、虐待、仕方がない—そんな説明で、この痛みはどうなるのだろう。同時に、その黒猫の目も思い出していた。
続きはまもなく
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