軌道外れ

1/1

1

第一話 アラーム

朝8時、コーヒーの湯気が立ち上る管制室。画面に並ぶデータストリームの中で、ひとつの異変を野田は見つけた。軌道計算の数値が、シミュレーション結果から微妙にズレている。最初は計測誤差だと思った。でも時間が経つにつれて、そのズレは大きくなっていく。周囲は気付いてない。打ち上げ予定まであと数時間。野田の指は、アラート送信ボタンの上で止まっていた。これまで何度も、彼は「多分大丈夫」という判断を信じてきた。だいたい、その判断は正しかった。でも今回は違う気がする。画面の軌道シミュレーションは、確実に目標から外れていく赤い曲線を描いていた。彼は深呼吸をして、ボタンを押した。数秒後、背後で席を立つ音。上司が画面を覗き込む。「これ、どういうことだ?」野田も知らない。知りたくもない。だがこれから、彼の視界に映るすべてが、その答えを突きつけることになる。

続きはまもなく

目次