系統樹の枝分かれ

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第一話 古い仮説との再会

論文整理の最中、田中は大学の図書館で一冊の古い学術誌を手にした。1970年代のものだ。そこに記された考察は、現在の教科書では見かけない仮説だった。生命の系統樹において、細菌と古細菌がもし共通祖先ではなく、それぞれ独立して進化した可能性があるという議論だ。

その仮説自体は今では否定されているはずだ。少なくとも、大学院時代に学んだことはそうだった。しかし何故か、著者の論理展開が引っかかる。確かに当時の解析技術では限界があったかもしれない。だが、それでもなお、別の可能性を検討する姿勢そのものが興味深い。

田中は同僚の鈴木にこの論文を見せた。鈴木は眉を顰めた。「これ、もう決着ついてるんじゃ?」そう言った。その通りだ。遺伝子解析の発展により、現在は定説がある。けれど田中は、なぜ著者がこんなことを考えたのか、その背景に興味を覚えた。

翌日、田中は当時の学会発表の記録を探し始めていた。この仮説がどのように議論され、なぜ次第に顧みられなくなったのか。その過程の中に、何か見落とされているものがあるのではないか。古い仮説への好奇心が、新しい問いへと変わり始めていた。

続きはまもなく

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